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天半藍色

2013年4月23日

 長い歴史を誇る三木家には素晴らしい伝統がたくさん受け継がれています。「天半藍色」もその一つです。文庫の創立者である13世與吉郎氏は、『出藍譜』(昭和30年、三木産業株式会社発行)のなかで、次のように述べています。 

 

 嘗て私の祖父、第十一世三木與吉郎が、勝海舟先生に書を乞うた時、先生は直に筆を執って、「天半藍色」と揮毫され、「三木さん、天下の藍玉を一手に握ろうなどと欲張ってはいけませんよ。まあ、腹八分目、せめて半分ぐらいの目標で、商賣はおやりなさい。」といふ、極めて含蓄のある言葉と共に、その書を下さったと聞いて居る。其の「天半藍色」の扁額は、永く大阪営業所の応接室に掲げられて居たが、惜しくも戦災で焼滅して、今は無い。 私はこの言葉がこよなく好きである。文字から受けるおほらかな響きもさることながら、此の四字に含ませて賜った海舟先生の教訓は、單に商賣道のみならず、凡ゆる事柄について、私にとっては、此の上もなき貴い戒めと観じたからである。

 『出藍譜』「序に代えて」より 

 

 残念ながら「天半藍色」と書かれた扁額は焼失したので、現物は残っていません。戦争の惨たらしさを改めて感じます。でも、この言葉自体は無くなることはありません。三木家に代々受け継がれています。ちなみに13世與吉郎氏は、『天半藍色』というタイトルの本まで出版されています。

(学芸員:新孝一)

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